2022年7月7日

自分のなかに着実に育ちつつあるフェミニズムと、対人関係の中で他人におもねり気遣って言葉を呑む自分との間に引き裂かれが生じることがあり、その度に結構痛手を食らう。一度気づいたしんどさからは目を背けることができないので引き受けてあれこれ考えるわけだが、しんどいはしんどいので、特に自分より年下の女性に「あなたも気づいてしんどくなれ」と言えない、言いたくない、責任取れないし。長い目で見れば、それ搾取されたんだよって言った方がよかった? 違くない? 攻めを受けるべきは搾取した側じゃないか。だったら今はただの恋バナとして楽しく聞き流せばいい。いや違くない? また次に同じようなことがあったら? 「よくなかったと思うけどね…」歯切れの悪い。ファッキン社会。

2022年7月5日

スーパーで、上ってくるエスカレーターをまじまじと見下ろしている、3、4歳の子どもを見かけた。私は軒先で傘の雨水を払っていて、ふと後ろを振り返り、大きな窓越しにその姿を見た。少し大きめのレインコートを着た彼の近くに保護者らしき人影はない。きっと心逸って一足早く乗ってしまったのだろう、直に買い物袋を抱えた誰かの頭がひょっこり現れ出るだろうと思った。それにしても、ひとりぼっちの幼い子どもとエスカレーターというのは不安になる組み合わせだ、とも思った。

以前の私は、とくに下りのエスカレーターが怖くてたまらなかった。もう母も妹も祖母もみんな先にエスカレーターを降りてしまって、自分だけが取り残されたときのことをかすかに覚えている。その記憶を思い浮かべようとすると、全体に灰色で、真ん中に真っ直ぐ、黒い階段がごぼごぼと流れている。下にいる家族の姿はぼんやりしていて、むしろピンク色のワンピースを着た幼い自分の姿のほうが、余程はっきり見える。自分の思い出のはずなのに、おかしい。

おそらく昔の私がしていたのと同じように、その子どもは張り詰めた表情をしていた。何か恐ろしいものが到来するのではないかと思うほど、深刻な顔つきだった。私もいくらか緊張して、上ってくる誰かを待った。大人の頭が二つ見えた。それはおそらく、学校帰りに寄ったのだろう男子大学生二人組で、とうていこの幼い子を保護する者だとは思えなかったし、実際そのまま子どもの脇をすり抜けて入り口から出てきた。

子どもに目を戻すと、上ってくる階段に足を乗せようと試みているのが見えた。一瞬にして肝が冷え、スーパーの自動ドアを入り、すぐ脇のエスカレーターに早足で向かった。それを知ってか知らずか、彼は私の目の前で「パパ!」と一声叫び、エスカレーターを離れ、一階フロアの生活用品売り場の奥へと駆けていった。

父親らしき男性は、入口近くにある洗剤の棚の影から現れて、子どもの名前を間伸びした声で何度か呼んだ。駆け寄る子どもを優しく迎えて、二人は手を繋いでその場を去った。見送る私はなんだか変な顔をしていたと思う。それから平気でエスカレーターを降り、トマト二つと茄子三本を買って帰った。

2022年7月3日

落ち込んでいるというか、心臓の辺りが腫れている感覚(抽象的な意味で)。今日食べたもの、昼間は茄子とズッキーニとえのきを炒めたやつに、麺つゆと水と一味やなんやを投入して付け汁みたいにしたやつで素麺をすすった。夜は米の飯、トマトと卵の炒め物。西紅柿炒鶏蛋という料理らしいが、大学一回生のころ初年度ゼミの先生に連れていってもらった中華屋で、大皿からよそって食べたやつが一番美味しかった。中華屋は去年か一昨年に潰れ、同じ場所に新しく火鍋屋ができた。

2022年7月2日

朝から何も考えずにアイドルの動画を見漁ったら元気が出て、陽が落ちる頃にチャリで期日前投票に行った。恥ずかしいことにこの歳で人生初投票だった。「投票用紙がめっちゃ書きやすい」という噂を以前から耳にしていたが、配られたペグシルとの相性があまりよくなかったし、私はもうちょっとざらっとした質感の方が書きごたえがあって好きかな、と思った。投票はつつなく済み、外食はしなかったけど、セブンイレブンで好きなもの全部買って帰った。ピース!

2022年7月1日

ロングコートダディオールナイトニッポンの特番で、堂前が数日前の夜、「ラジオ本番中にカフが錆び付いて上がらなくなる」という夢を見た、という話をしていた。堂前はプレッシャーのかかる仕事の前に結構悪夢を見るらしく、一方兎はいい夢ばっかり見るらしい。島の真ん中にピアノがあって、そのピアノを兎が演奏すると、周りを魚たちがピチピチと跳ねて踊るのだそうな。好きな魚に囲まれながら、もう弾けなくなったピアノを弾く夢。それを聞いた堂前は、「いい夢やな〜。まあ、悪夢のほうが吉兆夢とされてはいるけどな」などとコメントしていた。ロングコートダディのann0は、radikoタイムフリーで明日まで聞ける。

先週末、妹とマンゲキの公演に行ったら、ちょうどann0明けのロングコートダディの漫才を見られて嬉しかった。ライブというものは音楽に限らずよいですね。ミルクボーイは「パックンチョ」の漫才をやっていたが、内海が熱弁をふるいながら客席に向かってどんどんせり出してくるので、3D映像を見ているのかと思った。声を上げて笑いながら楽しく観覧していたところ、後から妹に「なんか、引き笑いだよね!」と言われた。

妹はこの数年ぼる塾にお熱で、田辺さんの哲学を内面化し、ウエスト高めのジャンバースカートを何枚も手に入れ、日を追うごとにぼる塾ナイズドされてきたのだったが、今回初めての直接?対面だった。ぼる塾がネットでよくない取り上げられ方をすると、怒りの長文LINEを私に送りつける彼女のことを、私はなかば五人目のぼる塾だと思っていて、なんならその日だって、気づいたら席から消えており、舞台袖から出てきかねず、戦々恐々としていた。田辺さんが「は〜い」と挨拶した時、恐る恐る横を見ると、妹はきちんと座っていて、平常通り笑っていた。私の妹に限らず、日本中に数えきれないくらいのブラザーアンドシスターがぼる塾にはいるのだろう。

串カツを食べにいく途中、妹の腕に鳩のフンが落ちてきた。潔癖ぎみな妹は悲鳴をあげ、ウェットシートで恐る恐る拭きとりながら、看板の上にいるハトをきっと睨み、「こっちを全然見もしない! 誰でもよかったんか!!」と怒っていた。串カツを食べ終わって同じ道を帰っていると、妹の好きな芸人さんがプライベートで遊んでいるのをちらっと見かけ、私の腕にしがみつき、「うわ、〇〇さんだ! 全部このためだったのか」と小さく欣喜雀躍していた。私の右腕に巻きついたのはフンを落とされた方の左腕で、私は「よかったねー!」って言った。

2022年6月30日

一昨日くらいにしばらく会っていない友人の本名をふと検索窓に入れたら、Twitterもブログもすぐさまヒットして、あまつさえYouTubeチャンネルまで見つけてしまい、震えた。忘れらんねえよの物真似で、ちょびっと甘ったるい気持ちになりたかっただけなのに。リターンバックがでかすぎる。まあ見つけたからには見てみる訳だが、外から見える範囲のものを見ただけで、その人が今どんな時間を過ごしているか、手にとるようにわかる気になって、自分の妄想とその人の事実がどんどんこんがらがっていく。これはよくないと思ったのでTwitterのアカウントをミュートし、少ししてやめた。共通の知人と話しているときに、万一その人の話題が出て、万一私のTwitterで検索することになったら、調べた上にご丁寧にミュートまでしていることがバレて、めちゃくちゃ恥ずかしいからである。どうでもいい!強アルカリ性の洗剤で完全に消し去ったと思っていた自意識が、つつかれてふと見下ろした脇腹にしつこくこびりついていることに気づく。やな黄色。

くたびれてウッドデッキの手すりに顎を乗せる百合の写真が撮れたので、飯を食っている時に見せたら、「何?」とつまらなそうに聞き返される。「だるそうでかわいいっしょ」と教えてあげたら「何言うてん。頑張ってるやろ」と言われてまあそうとも言える、言えるがもっとなんか他に、と苛立ち返答に詰まる。学歴フリーク気味のその人とは3年前から知り合いで、ついこないだ高校に入学したという。つい、と言ってももう3ヶ月経つのだが。私が通った大学名を教えた後からややまともに喋ってくれるようになったような気がするが、そいつが3年でちょっと大人になっただけかもしれない。

同じことをやり続ける面倒くささを引き受けないと味わえない面白さについて、身をもって実感するたび、反吐が出るほどかったるい。帰りのバスの中でめちゃくちゃかったるく、やってらんなくなり、降りたバス停の近くのスーパーでかぼちゃのベジパピコを買った。これで4日連続ベジパピコを食べている。私がベジパピコに飽きるが先か、ベジパピコが消えるが先か、この夏、目が離せない。ベジパピコは美味しい。消えないで。

ベジパピコの殻を捨てたら、もう一本に手が伸びそうになったので、食べちゃわないようにスマホをいじって、はてブロを新しく開設した。てか実際友達のブログをみつけた影響がかなりでかい。相変わらず自分は恥ずかしいやつなのだと、こうやって書いてみたからわかる。